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CRAFTSMAN COFFEE ROASTERS 青山 高志 インタビュー|The Roaster’s Coffee Life

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2023/08/07

スペシャルティコーヒーの世界に欠かせない存在のひとつがロースター。PostCoffeeでは、コーヒーの世界をより楽しんでもらうべく、国内外の様々なロースターから取り寄せたコーヒーを販売しています。

本企画では、彼らのコーヒーとの出会いやロースターとしての想いに迫るインタビューを実施。今回はCRAFTSMAN COFFEE ROASTERS(クラフツマンコーヒーロースターズ)の青山さんにお話を伺いました。(文中敬称略)

コンクリート打ちっ放しの建物にガラス張りの近代的な店舗。店内は片側の壁に赤煉瓦を敷き詰め、奥には一段高くなったバリスタカウンターと目立つところに構える大きな焙煎機。全体的にオープンで温かい雰囲気に包まれた、活気のあるロースタリーカフェだ。

「敢えてあげるならアメリカの西海岸のコーヒーショップのような雰囲気をイメージしてます。店名の由来は、“クラフトマン=職人”、こだわりを持った職人を目指してますが、一方でお客様に寄り添う姿勢を大事にしたいというのが創業当初からの思いです。また、コーヒーに限らず様々なことにこだわりたいという思いから複数形にしてクラフ“ツ”マンとしています。」

そう話してくれたのは代表を務める青山 高志さん。2016年の「CraftsmanCoffeeRoasters」の創業時からチームをサポートし、創業者の高城氏と共同経営者としてクラフツマンコーヒーを支え、2021年からは高城氏の独立をきっかけに単独で「合同会社クラフツマン」の代表を務めている。

海外での経験

父親の仕事の関係でフランスのリヨンという街で生まれ育った青山さん。3歳までをフランスで過ごした後に日本へ移り住んだ。幼少の頃から海外に行くことが多かったということもあり、さまざまな暮らしや文化に触れてきた経験は彼にとってかけがえのない財産だ。

「旅行で海外によく連れていってもらったり、大学時代にはバックパッカーをしていたこともあって、見知らぬ土地にいくことは抵抗がなかったですね。子供の頃から他の国をみたり、文化に触れていたということもあって、そこで生まれ育ったからこその“人柄”や“考え方”は今の仕事にも通ずる部分があります。」

そんな特異稀な幼年期を送っていた一方で、小学生の時からサッカーに打ち込む毎日を送っていた青山さん。

「昔はサッカー選手になるのが夢でした。ただ一方で中学生くらいから勉強に目覚めて、サッカーをやりながらも勉学に一生懸命取り組んでいました。夢を諦めたわけではないんですけど、海外に行ったときにスポーツ観戦をする機会も多く、その場を楽しんでいた経験や自分がスポーツを通して様々な事を学んだように、将来はスポーツを通した社会貢献や豊かな暮らしを地域に届けていきたいな、と思うようになったんです。」

大学に進学してからは、「スポーツマネジメント分野」を専攻し裏方としてスポーツを支えていくための勉学に励んだ。大学時代に青山が属していた「スポーツ社会貢献プロジェクト」では、地域の子供たちにスポーツの楽しさを伝えたり、スポーツを通して豊かな暮らしを提供するための活動を行っていたそうだ。

クラフツマンコーヒーとして豊かな暮らしを提供することを大きな目標に掲げる青山さんにとって海外での生活や学生時代に得たさまざまな経験は、彼自身そして今の店舗で表現したい事へと繋がっていく第一歩だった。

大きな転機

大学を卒業後、某スポーツメーカーに就職した青山さん。2年目の時に名古屋へ転勤することとなるが、この転勤を機に彼の人生は大きく変わることとなる。

「家の近くに『TRUNK COFFEE(※)』というコーヒーの専門店があったのでよく通っていました。そこで初めて浅煎りのエチオピア ナチュラルを飲んでからスペシャルティコーヒーの美味しさを知って、コーヒーの魅力にどんどん惹かれていきました。それからカッピング会に参加させていただいたり、常連さんやスタッフさんとも顔馴染みになっていくなかで、段々と目的がコーヒーからみんなと話しながら過ごす時間を楽しむことへと変化していきました。」

元々、家族の影響でティータイムやブランチを楽しむ文化が生活の中に浸透していたという青山さんにとって「コーヒーショップで過ごす日常の良さを改めて感じることができたのは良い経験だった」と、この時に感じた感覚は今のお店作りにも色濃く反映されているという。

青山さんがコーヒーに興味を持ち始めた頃、偶然にも大学時代の友人である高城から地元下関でコーヒーショップを始めるという話を聞く。

「ちょうどその時、高城からその話を聞いて、なぜ飲食店?なぜコーヒー?と理解が進む前にプロジェクトや物件も決まっていて驚きましたね(笑)」

クラフツマンコーヒーの創業者である高城氏は、青山さんと4年間同じ専攻で勉学を共にし、「スポーツ社会貢献プロジェクト」でも同じチームのメンバーとして様々な経験をした仲間である。

「高城がやることに興味があったし、シンプルに手伝いたかった」と、当時の青山さんは分野は違えど新規店の立ち上げなどに関わる仕事をしていたこともあり、月に1,2回ほど名古屋から下関まで通いオープン準備のサポートをしていたという。その後、お店がオープンしてからも1年ほどは名古屋から下関まで足を運び、クラフツマンコーヒーの成長を見届けた。

下関への移住

「お店に通う中で『下関』という街の魅力に気付き始めたんです。名古屋にいたときに感じた、人と繋がる中で自分の人生が豊かになっていくっていうことを、この街でコーヒーやカフェを通じて自分が提供する側として創っていきたいと思い、最終的には好きだった会社を退職し、下関への移住を決めました。」

こうして青山さんは、クラフツマンコーヒーの立ち上げから1年後の2017年に、高城氏の共同経営者として正式にチームにジョインすることとなる。

僕らの強みは「人」

ほかのコーヒーショップと大きく違う点が、彼自身「焙煎士」や「バリスタ」として表立ってない部分だ。

「僕は焙煎もできないし、コーヒーの知識も他のスタッフたちには劣るかもしれない。でも、下関という街でやっていくにあたって僕だからこそできる店舗のつくり方だったり、コーヒーを通して、もしくはコーヒー以外でもお客様に楽しんでいただける体験を提供したいです。」

経営者としてチームを引っ張っていく一方で、あくまでも店舗としての主役は“スタッフ”だと言い切る青山さんは、敢えて裏方に徹底しチームづくりを行っている。

「僕らの強みは“従業員”だと思っています。お客様に寄り添う接客サービスだったり豊かな暮らしを提案していく主役はスタッフであるし、料理が得意な人がスイーツをつくったり、音楽好きな人が店舗のBGMを考えたりなど、スタッフがこの会社を通して自己実現を果たしていくことが、お客様にも喜んでいただける部分に繋がっていく。それができるのは信頼できる素晴らしいスタッフがいるからこそですね。」

ローカルのコーヒーショップとして

そんな素晴らしいスタッフたちが魅力のクラフツマンコーヒーだが、もうひとつ大きな特徴といえば地域密着型のコーヒーショップであること。特にコーヒー業界の中では「下関といえばクラフツマンコーヒー」というイメージを持たれている方も少なくない。ローカルのコーヒーショップとしてこれだけ多くの方に愛されるお店になったのには青山さんの考えがしっかりと落とし込まれているからだ。

「コーヒーの専門店としてもちろんこだわるけど、市民の方達にとってはそれがすべてではないので、無理して押し付ける必要はないし、お客様の求めることを見極めながらやっています。一方で僕らもそれに合わせるだけではなく『こんなコーヒーの世界もあるんだよ』と伝えていけるようなユニークなイベントをしたり、バランスを意識しながらコーヒーショップらしくない取り組みをしていけたらなと思います。」

ローカルのコーヒーショップとして、ありのままの温度感で伝えていくことの大切さ、そしてコーヒーショップの枠を超えて地域に貢献していけるお店として「シンプルにこの街を好きでいてくれる人が増えていったら嬉しい」と青山さんは話す。

これから目指すべきところ

下関を代表するコーヒーショップとして現在2店舗を構え、豊かな暮らしの提案をし続けるクラフツマンコーヒー。今後目指すべき形とは。

「会社のミッションは『下関を豊かな暮らしのできる街にすること』を掲げていますが、今後はうちのお店を通しての豊かな暮らしの提供だけではなく、この会社での経験を生かしながら他社さまや他の地域のサポートをして、もっと良い街にしていくっていうのを目指していきたいです。繋がりが増えていく中で、関わっている人たちが『この街っていいな』と思えるようになっていくのが理想ですね。」

“クラフツマン”として、お店に関わる全ての人たちの暮らしを豊かにしたいという青山さんの想いは、ローカルのいちコーヒーショップとしての枠を超え、多くの人々の心に届いている。

「僕は創業者ではないし、一から創業する勇気はないかもしれない。でも既存の会社や事業を地道に粘り強く、育てていきたいんです。」

そんな謙虚で真面目な姿勢が多くの人を惹きつける所以だろう。これからも「愛されるリーダー」として、クラフツマンコーヒをより良い未来へと導いていく。

※TRUNK COFFEE(トランクコーヒー):2014年、古くから喫茶文化が息づく街、名古屋にオープン。現在、名古屋市内に3店舗、中国深センに3店舗を展開しているスペシャルティコーヒーの先駆者的存在。2022年の11月にPostCoffeeのロースターパートナーにも参画。

青山 高志 / Takashi Aoyama
CRAFTSMAN COFFEE ROASTERS

フランスのリヨンで生まれ育つ。大学では「スポーツマネジメント」を専攻して、スポーツを通した社会貢献に興味を持つ。社会人時代に下関へ移住し、友人が立ち上げた「CRAFTSMAN COFFEE ROASTERS」のチームにジョイン。「下関を豊かな暮らしができる街にする」というビジョンを掲げ、日々奮闘している。

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焙煎士としておいしいコーヒーを消費者に繋げ、各地のロースターさんと一緒になってスペシャルティコーヒーの魅力を伝え、いい循環を生んでいきたいです。