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AKITO COFFEE 丹澤 亜希斗 インタビュー|The Roaster’s Coffee Life

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2023/06/14

スペシャルティコーヒーの世界に欠かせない存在のひとつがロースター。PostCoffeeでは、コーヒーの世界をより楽しんでもらうべく、国内外の様々なロースターから取り寄せたコーヒーを販売しています。

本企画では、彼らのコーヒーとの出会いやロースターとしての想いに迫るインタビューを実施。今回はAKITO COFFEE(アキトコーヒー)の丹澤さんにお話を伺いました。

野球少年から、コーヒーの道へ

都心から車を走らせること約2時間半、南アルプスの山々を眺めながら向かった先は山梨県は甲府市。街の中心部、甲府駅からすぐそばの国道沿いに「AKITO COFFEE」は店舗を構える。木製のクラフト感のある看板に、シンプルで清潔感のある雰囲気の2階建ての建物からは温かみが感じられ、お店には地元の方をはじめ多くのお客さんが訪れる人気店だ。

オーナーを務めるのは丹澤 亜希斗さん。地元山梨でロースターを構え今年で9年目を迎える彼だがどんな学生時代を送っていたのだろうか。

「ずっと野球少年でした、小学1年から高校3年まで続けていたんですけど高校までやって、もう一生やりたくないなって思いましたね(笑)そのぐらい本気で打ち込んでいました」

県内屈指の強豪校へ進学し、毎日ひたすら野球に打ち込む日々を送っていたという丹澤さん。12年間続けた野球も高校3年での夏大を最後に引退し、高校を卒業後専門学校に入るがそこでの2年間は決して充実したものではなかったという。

「今まで野球しかしてこなかったのでそれがなくなった途端、やることが無さすぎて暇を持て余していたんですよね。何も目標もなく2年間ふらふらとしていたときに『お店をやりたい』と思ったんです、ただ特に何のお店をやりたいとかは決めてなくて、人に会うのが好きだったので、人に会えるような仕事がしたいなと思って飲食の道へ進みました。」

縁があった和食店に就職したことをきっかけに、食や飲食店というものに興味を持つようになったという彼だが、どのようにしてコーヒーの道を進むことになったのだろうか。

「自分でお店をやるんだったらカフェをやりたいなと思っていて、夜というよりかはお昼に料理とコーヒーとか、ちょっとしたお酒が出せたらいいなぁと考えていました。それでコーヒーを勉強してみようかなと思ってやり出したのがきっかけです。当時はラテアートが流行り始めていたということもあり、僕もその影響でエスプレッソマシンを買って、自分で勉強をしだしました。そんなことをやっているうちに焙煎もやってみたくなって、その和食屋さんの厨房を借りて手網焙煎をしたりと、どんどんコーヒーにのめりこんでいきました。」

思いを形に。

コーヒーに夢中になるあまり、和食屋を辞めてコーヒーロースターとして自分のお店をオープンすることを決意した丹澤さんは23歳の時にAKITO COFFEEを立ち上げた。若くしての開業に苦労は感じなかったのだろうか。

「その当時は苦労に感じていなかったんですけど、今考えたらすごい苦労があったかもしれないですね。ひとりで朝から晩まで立ち続けて、営業後に焙煎して、をほぼ毎日繰り返していて休みの日には動けなくなるくらいがむしゃらにやっていました。とにかくその当時はひたすらにやりたいことをやり続けたっていう感じです。」

焙煎士として日々コーヒーと向き合ってきた丹澤さん。しかし焙煎が思うようにいかず悔しい思いをしたこともあったという。

「浅煎りを焼き出したタイミングでなかなか思うように焼けずにいて、浅煎りのコーヒーってどうやって焼くんだろうと色々考えていたときに、他のお店が気になり始めてそこからお店を回るようになりました。特にFuglen coffeeでTim Wendelboe※の豆を飲んだときは、見た事のない焼け方と味わいに衝撃を受けました。そこから改めて焙煎って面白いなと思い、浅煎りの焼き方も色々と試行錯誤しながら理想の形に近づけることができました。」

AKITO COFFEEのコーヒーには透明感のあるクリーンな味わいにしっかりとした甘さが感じられるが、その高い焙煎技術の背景には丹澤さんの探究心と焙煎と向き合う姿勢がコーヒーに表現されているのだろう。

お店を支える“人”

そんな美味しいコーヒーを届け続けているAKITO COFFEEだが、お店を支えるメンバーの人柄や雰囲気もとても魅力的だ。「AKITO COFFEEではメンバーも大切なお店の要素」と口にする丹澤さんだが、店舗における人材面はどのように考えているのだろうか。

「ほんとにフィーリングですね。人が足りなくて働けるスタッフを入れるという考えはあまりなくて、この人が入ったら面白いだろうな、とかそんな感じで選んでいます。この人数でこれだけやれればいいかなと思ったらそれ以上はやらない、でも逆もありきで、この人だったらこういうことができるなっていう方に出会ったら、何かを起こすかもしれないですね。やっぱり人でお店の雰囲気も変わるので、とても大事で、毎年新しい人が入ったりとか、入れ替わったりすることでお店も変化していくので、その時々でお客さんにも楽しんでもらえたらいいなって思っています」

運営の方針もメンバーに合わせて変化していく、そこで働く人たちを一番に考えみんなが自然体でいられることが結果としてAKITO COFFEEのゆるやかな雰囲気をつくりだしているのかもしれない。お客さんとの接客においても”距離感”を大切にしているという丹澤さんは普段どのようなコミュニケーションを意識しているのだろうか。

「接客てあんまり考えたことはないんだけど、普通に日常会話もするし、全くコーヒーの話をしない人もいるし、なんかこれといって決めてないけどコーヒーがあることによって色んなコミュニケーションが自然と生まれるのは、僕らの接客の形なのかなと思います。」

日常に寄り添うコーヒー。

コーヒーを通して日常的にコミュニケーションが生まれるAKITO COFFEEでは、豆の販売量も年々増えていっているという、地域のコーヒー豆屋としてお客さんにどのようにコーヒーを楽しんでもらいたいか伺った。

「家に帰って飲んでもらって美味しかったら、もうそれが正解なのだと思っています。できる限り日常的に美味しいコーヒーをちゃんとチョイスしてもらって淹れてもらうっていうのが大事かなっていう気がします。地方だとおじいちゃんおばあちゃんたちも豆を買っていって下さるし、その方たちに普通に美味しいコーヒーを飲んでもらうことはすごく大切なので、それに対してのアプローチは深く考えています。」

地域に根ざし幅広いお客さんから愛されるお店として、山梨のコーヒーシーンを牽引してきたAKITO COFFEE。丹澤さんは地方でコーヒー屋をやることについてどう思っているのだろうか。

「ほんとに山梨で良かったな、としか思っていないですね(笑)あまり頭もがちがちにならないし、いい環境だなと常々思っています。水も美味しいのでコーヒーにとってもいいですしお店ではゆっくり話しながらコーヒー淹れたり、来たい人がきてて、なんかその塩梅がすごく好きですね。」

コーヒーは人生そのもの。

この土地、そしてお店への愛がひしひしと伝わってきたが、そんな彼にとってコーヒーとはどんな存在なのか。

「コーヒーがあったからコロンビアとかにも行き出したり、いろんな人と出会えたし、人生がとても豊かになっていて、僕の中では人生そのものですね。」

少し照れくさそうにそう話してくれた丹澤さん、遂に来年10年目の節目を迎えるAKITO COFFEEだが、今後の目標をこう語る。

「山梨のコーヒーシーンがちゃんと美味しいコーヒーを飲む習慣だったりとか、文化になるようなアプローチをしたいと思っています。山梨だからできること、山梨のコーヒー屋としての確立した文化を作っていきたいですね。」

地方のコーヒー屋として日常に寄り添うコーヒーを提案し、地域の人々の生活に無くてはならない存在となったAKITO COFFEE。山梨の地に新たなコーヒー文化を確立させ、これからも美味しいコーヒーを届け続ける。

※Tim Wendelboe:ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ2004年度のチャンピオン。ノルウェーのオスロにロースターを構えるコーヒー界のレジェンド。

丹澤 亜希斗 / Akito Tanzawa
AKITO COFFEE

専門学校を卒業後、和食店で働き始めたことをきっかけにコーヒーに興味を持ち始める。2014年より独立し、自身の名を冠した「AKITO COFFEE」をオープン。「日々に寄り添うコーヒーを」をコンセプトに掲げ、コーヒーのある豊かな暮らしを地元山梨で提案している。

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焙煎士としておいしいコーヒーを消費者に繋げ、各地のロースターさんと一緒になってスペシャルティコーヒーの魅力を伝え、いい循環を生んでいきたいです。