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hazeru coffee(ハゼルコーヒー) 窪田 豊久 インタビュー|The Roaster’s Coffee Life

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2023/08/03

スペシャルティコーヒーの世界に欠かせない存在のひとつがロースター。PostCoffeeでは、コーヒーの世界をより楽しんでもらうべく、国内外の様々なロースターから取り寄せたコーヒーを販売しています。

本企画では、彼らのコーヒーとの出会いやロースターとしての想いに迫るインタビューを実施。今回はhazeru coffee(ハゼルコーヒー)の窪田さんにお話を伺いました。(文中敬称略)

富山県は富山市、中心部からすこし離れた古沢エリアに「hazeru coffee(ハゼルコーヒー)」はお店を構える。真っ白な外壁の洗練された雰囲気に、シンプルな佇まいの平屋建てのロースタリーカフェは一際目を引く。

優しい自然光が入る店内には、大きな木のテーブルが真ん中にひとつ。「それぞれのお客様が思い思いの時間を過ごすのはもちろんのこと、そこに居合わせた人たち同士で会話を交わしたり、隔たりのない空間だからこそ生まれる新しい出会いを楽しんでほしい」という 店主の想いを形にしている。

そんなhazeru coffeeのオーナーを務めるのが窪田 豊久さん。2016年の開業から今年で創業6年を迎える。

コーヒーと出会った学生時代

「小学生の時の卒業文集には『将来は社長になって、フェラーリを乗り回したい』と書いていました(笑)」

昔から会社を経営するということに興味があったという窪田さん。高校を卒業後は横浜の大学に進学し、経営学を専攻していた。

「大学4年の頃、横浜駅のKIOSKでアルバイトをしていたんですけど、ちょうどその頃にスターバックスが初めて横浜に出店したんです。そこで飲んだカフェラテが人生初のエスプレッソドリンクだったと思います。」

今となっては馴染みのあるカフェラテも当時はまだ珍しかったため、それまでカフェオレしか飲んだことのなかった窪田さんは、ミルクの甘さや濃厚さが感じられ、かつコーヒーの味わいがしっかりとあるスターバックスのラテに驚いたそうだ。この経験が窪田さんにとって初めての美味しいコーヒーとの出会いで、のちの人生を動かすきっかけとなる出来事だった。

その後、大学を卒業した窪田さんは地元石川に戻り、銀行員として働き始めた。

「時が経つにつれ、自分で経営するというよりかは、人にアドバイスをするみたいな立ち位置の方が向いてるのかなって思うようになって、銀行に就職を決めました。」

だが実際に働き始めると、お金を貸す方と借りる方というお客様との関わりに窮屈さを感じるようになり、もう少しフラットな関係性を築いたり、会話ができる仕事をしたいと思うようになったという。

銀行員からバリスタの道へ

会社員になってからもカフェで資格試験の勉強をする日々を送っていた窪田さんは、ふと大学時代にスターバックスで飲んだカフェラテのことを思い出して、行動にでる。

「当時はまだ石川県にスターバックスが無かったので、あの時飲んだカフェラテが美味しかったなっていう記憶と、いつか自分で何かをやりたいという思いとが相まって、金沢にスターバックスを呼んできたらいいんじゃないかって思い、電話をかけたんです。違う地域の求人しかでてなかったのですが、北陸にも出店予定というお話をきいて、絶好のタイミングだと思い、入社を決めました。」

スターバックスでは、コーヒーの魅力を伝えることはもちろんのこと、店長としてチームやブランドを創り上げていくことの大切さを学んだという。

「事業の規模が大きくなるほど、会社の掲げるビジョンやスローガンって、現場のひとたちに浸透させることって難しくなるけど、スターバックスは本気でそれを実現しようとしているなっていうのを感じました。常にミッションだったり、ビジョンに立ち返って、どうしていくのかっていう話をしたりとか、日常的にそういうことを伝えたり、理解させたり、浸透させていくっていうことがこういうチームやブランドを創っていくんだなっていうことを体験をもって理解できたっていうのがすごくいい経験でした。」

スペシャルティコーヒーの魅力と、価値観の変化

それまで主に北陸の店舗を担当していた窪田さんはさらに上のポジションを目指す中で他のマーケットも経験したいという想いから京都へ転勤することになるが、そこで初めてスペシャルティコーヒーに興味をもつ。

「当時、UnirさんやWEEKENDERS COFFEEさん、小川珈琲さんもスペシャルティコーヒーに特化した新業態のショップを立ち上げたということもあって、京都のコーヒーシーンが盛り上がっていたんですよね、中でも一番衝撃だったのは焙煎度合いが浅いということ、浅く焙煎することでこんなに風味豊かに個性が感じられることにすごく感動したのを覚えています。」

いままで浅煎りのコーヒーには馴染みがなかった窪田さんにとって、スペシャルティコーヒーとの出会いはとても新鮮な体験だったそうだ。

そんな中、銀行員を辞めてコーヒー業界に入ったときの「一生をかけてやっていく仕事に就きたい」という思いを振り返る中で、さまざまな要因が重なり、彼の心を動かし始める。

「京都に異動した時に、子供が生まれて生活スタイルが変わったんです。それまでは“未来のこと”に向けてこれを頑張ろうという風に考えていたんですけど、なんかそうじゃなくて“今”を大切に生きないとなって、価値観が変わってきたんです」

一冊の本との出会い

価値観が徐々に変化する中、窪田さんは【田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」著:渡邊 格】という本と出会った。

「この本を読んで、自分でやることで、生活する場所とか時間とか自分のやりたいことって実現できるんだなって思った時に、『自分でやろう』って思ったんですよね。」

この時、3年後にお店を立ち上げることを決意した窪田さんは開業に向け焙煎のセミナーを受けたり、ひたすらコーヒー屋を巡る日々を送った。

爆ぜた想いを形に

その後約15年ほど勤めたスターバックスを退社し、2016年に「hazeru coffee」をオープンした窪田さん。店名の由来は、コーヒー豆が爆ぜる(はぜる)という焙煎の専門用語からつけたという。

「コーヒー豆がハゼてフレーバーが溢れ出した瞬間ってすごく魅力的だし、そういう個性のあるコーヒーを提供したいという思いと、自分がコーヒー屋をやりたいという『想いが爆ぜた』という意味合いもあります」

当時、富山では浅煎りのスペシャルティコーヒーを出しているお店は数えるほどしかなかったため、浅煎りのコーヒーを広めたいという想いから、「コーヒーの新しい魅力と出会えるお店」をコンセプトに掲げた。

中でもhazeru coffeeが特に大切にしているのはコーヒーの試飲。

「コーヒーの味わいって言葉ではなかなか伝わりにくいので、必ず体験してもらうように心がけています。注文しなくてもこういう世界があるんだって知ることもできるし、そういう出会いから生産地や作り手さんへの興味にも繋がっていくと思います」

敷居の高いスペシャルティコーヒーショップだからこそ、お客様目線に立って美味しいコーヒーの魅力を伝えることは、スターバックス時代にブラックエプロン※としてコーヒーのセミナー講師をしていた経験も生かされているのだろう。

地方を盛り上げたい

窪田さんは、コーヒーの新しい魅力を伝えると共に、地方を盛り上げたいという目標を持っている。

「一見すると地方って何にもないと思われがちですが、一歩踏み込めば魅力的な人たちが沢山いて、素敵なお店が沢山あってすごく楽しいんですよね。そういう方たちとペアリングしながら、地元の人たちには富山っていいよね、富山好きだよねって再認識してもらうのがひとつと、県外の方たちにも、そんな人たちがいる富山に行きたいって思ってもらうことでこの場所が盛り上がってくれたらいいなと思います。」

オープンから6年が経ち、当初の理想としていた目的地となるお店をつくることを体現している窪田さんは、今後の目標をこう語る。

「まだまだもっと富山にスペシャルティコーヒーを広めていきたいという想いがあります。自分ひとりで伝えていくには限界があると思うので、いろんな形で同じ想いを持った人たちと一緒になってこの業界を盛り上げていけたらと思います。」

富山のスペシャルティコーヒーシーンを牽引するhazeru coffee。窪田さんの想いが形になったコーヒーの輪はこれからもずっと広がり続け、多くの人々の心を動かすだろう。

窪田 豊久 / Toyohisa Kubota
hazeru coffee

2016年富山に「hazeru coffee」を創業。2019年には「Coffee CollectionDiscover」という焙煎の大会で優勝するなど、特に浅煎りの焙煎を得意としている。2020年には街の中心部エリアにスタンド形式の2店舗目をオープンし、富山のコーヒーシーンを牽引している。

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焙煎士としておいしいコーヒーを消費者に繋げ、各地のロースターさんと一緒になってスペシャルティコーヒーの魅力を伝え、いい循環を生んでいきたいです。